一言で言うと、『叱らないこと』だと私は思います。
例えば、あなたが出張前に信頼している部下に大切な書類の作成をお願いしたとしましょう。
数日後、出張先から帰ってきたあなたは、その部下からできあがった書類が机の上に置いてあるのを確認しました。
『内容について確認をお願いします』と付箋付きで。
出張先では、あなたは望んでいたこととはほど遠いことを体験して、少し気分がイライラしていました。
そんな気分を抱えたまま、書類の中身を見てみると・・・
その内容は、あなたが予想していたものとは大きく違うものでした。
こんなとき、あなたは部下に対して、どのような対応(反応)をしますか?
『この書類は、なんだっ? 全然、内容が違うだろっ』と叱る人がいるかもしれません。
あるいは、
『俺の話をちゃんと聞いていたのかっ?? どうしてこんな内容になったんだ?』
と不満そうに部下に真意を聞く人もいるかもしれません。
少し立ち位置を変えて、部下の立場に立ってみてください。
その部下は、『いや、上司の言う通りに作った書類なのですが・・・』と思うかもしれません。
部下は部下なりに、あなたの話をしっかりと聞いていたのです。
このようなケースで部下を叱ると、部下によっては、
あなたとの会話を少しずつ避けるようになるかもしれません。
また、あなたとの心の距離を少し置くようになるかもしれません。
そうなると、この先、あなたと部下の間はギクシャクするかもしれませんね。
私が数年前に学んだNLP(神経言語プログラミング)の前提にこんな言葉があります。
『相手の反応があなたのコミュニケーション能力の結果である』
実は、できあがった書類の内容がまさに、あなたが伝えた内容なのです。
私は、この言葉と出会ってからは、部下への対応が変わりました。
このようなケースなら、私はこのように部下に尋ねるでしょう。
『私が伝えたかった内容とは、少し異なる内容になっているけれど、
私の話をどんな風に聞いたのかな? どんな風に受け取ったのかな?』と。
そして、部下の話を聴きます。
『聞く』ではなく、『聴き』ます。
人は、『自分が正しい』という前提を無意識レベルで持っています。
この前提がいらぬ感情を抱くこともあるのです。
また、自分を正当化する動きにもなることもあるでしょう。
部下の話を聴いて、私が伝えたかった内容とのギャップを探ります。
私が伝えたときに使った言葉のニュアンスと部下が受け取った受け取り方の微妙な違いなどを明らかにします。
時には、『言った、言わない』の次元にたどり着く場合もあるかもしれませんが、
私の伝えたかった内容と部下が受け取った内容にギャップを明らかにすることにより、
今後、どのようにしていくかの話し合いをするでしょう。
部下とのコミュニケーションで大切なことは、『叱らない』ことです。
『叱らない』は否定用語ですから、この場合の肯定的な表現は『受け入れる』になるのかなと私は思っています。